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アフリカ問題学習 第4弾! 12月11日(日)午後2時~

ジブチ自衛隊基地をとりまく
地域情勢と安保法制
-ソマリア・南スーダン-
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講師 高林敏之さん 
めったに聞けない! 高林敏之さんはアフリカ問題の専門家です


昨年9月19日に自民党・公明党によって強行採決された安保法制(戦争法)を、安倍政権は実行段階に移しつつあり、日本国憲法の平和主義はいまや瀕死の状況にあります。 
なかでも安倍政権は海外拠点の一つとしてアフリカを重視し、このままいけば殺し殺される危険が日増しに強まっています。
いま、アフリカで何が起こっているのかを高林講師に縦横に語っていただきます。アフリカを身近に学ぶ絶好の機会として 是非ご参加ください。


12月11日(日)午後2時から4時半 
    奈良県文化会館第二会議室


*参加費 500円 (但し、会員および当日入会者は無料)
*予約なしでも、どなたでも参加できます
*当日は奈良マラソンがありますので、車でお越しの方はご注意ください

# by naraala | 2016-11-23 11:54 | 最新のお知らせ

ニュージーランドを知ろう!


  ★日時:8月21日(日)・午後2時~4時半  
          「さくら診療所」


 奈良県の国際交流員の
ニュージーランド人(男性:オルモンド バン マリウス)を
お招きして国の生活や文化を映像を交えて話ししてくれます。
彼はマオリの血をひいているそうで、マオリ族の歴史も語ってくれます。
ギター演奏もしてくれるそうです。
飲み物などもご用意しております。

参加費 無料

# by naraala | 2016-07-29 10:48 | 最新のお知らせ

岡真理さん講演 報告

岡真理さん講演 報告_d0117895_2315231.jpg


繰り返されるジェノサイド 封鎖・占領・植民地主義
~完全封鎖下のガザを訪ねて~
ナラーラの主催で京都大学の岡真理さんが講演


ナラーラは、現代アラブ文学とパレスチナ問題がご専門の岡真理さん(京都大学)を講師としてお招きし、標題名の講演会を開催しました。開催日時は9月6日(土)午後2時から4時30分まで。会場は奈良県文化会館AB会議室。今次のイスラエルによるガザ攻撃に対する関心の高さを反映して、100人の方が参加されました。
講師は、学生の時からパレスチナ問題を現代世界に生きる人間の思想的課題として考え続けてこられ、しかもご自身が現地に入りご自分の眼で現実を見てこられ、現地発の確かな情報に基づいてイスラエルのガザ攻撃の不当さとパレスチナ問題の本質を訴え続けてこられました。それだけにお話は、広がりと深さにおいて、2時間という時間では語りつくせないものだということが感じ取られました。

イスラエルはガザに対する攻撃を、この6年間に3回行っています。
今次(2014年)の攻撃は、現地時間で7月7日から8月26日まで51日間に及びました。イスラエルによる今次攻撃の目的は、4月のハマース(ガザ)とファタハ(西岸)の和解により6月に発足したパレスチナ暫定統一政府の切り崩しにあります。その被害規模は、パレスチナ側の死者2168人(うち民間人1662人80%)負傷者10895人に対して、イスラエル側の死者は66人(民間人8人)です。
現地時間8月26日午後7時(日本時間8月27日午前1時)にエジプト政府の仲介によりイスラエル軍とハマースの間で長期的な停戦合意が発効しました。私たちはこのことを単純に喜んでいいのでしょうか。講師は、「『停戦になってよかったね』ということばに傷ついた。」というガザの友人のことばを紹介されました。
講師は、6年で3回にわたるイスラエルのガザに対する攻撃について、過去2回の攻撃はジェノサイド「的」攻撃であったが、今次攻撃は、世界が注視する中で公然と行われた大量殺戮・大量破壊、ジェノサイドそのものだと指摘します。今回の停戦合意でも、長期的停戦を保障するものは何もなく、ましてハマースが求めていたガザ封鎖の全面解除など核心の問題については、未解決のままです。ガザの人々は、イスラエルによる次の新たなジェノサイドがいつ始まるかと不安におびえています。
講師によれば、停戦後も無人偵察機がガザの上空を飛び回っており、この無人偵察機にはソニー製のレンズが使われているそうです。180万のガザの住民は、イスラエルによる完全封鎖の下、外との人と物の行き来が絶たれ、そこから逃れることのできない「袋の鼠」状態に置かれています。一方、イスラエルでは、ユダヤ系市民の95%が戦争を支持し、官民によるレイシズム、アラブ人に対するヘイト扇動が行われています。

ここで、講師は、「イスラエルとは何か」(イスラエルという国の成り立ち)という問題に話しを進められました。
今回ガザで起きていることは、1948年にまで遡ります。アメリカの支援の下、この年の5月14日(ユダヤ暦)にイスラエルが建国されます。この時、多くのパレスチナ人が虐殺され、およそ80万人から100万人のパレスチナ人難民が発生しました。この日のことを、パレスチナ人は「ナクバ」(アラビア語で「大破局」「大災厄」)と言います。イスラエルは、1897年第1回世界シオニスト会議以来の「シオン(ユダヤ教の神殿のあるエルサレム郊外の丘)に還れ」をスローガンとし、選民意識を土台としたユダヤ人の偏狭かつ排他的な民族主義の思想に基づくシオニスト国家であり、パレスチナ人に対するレイシズム(民族浄化)により建設された入植型植民地国家です。イスラエルは、貧しい人ではなく金持ちと健康な人の国です。建国後、今日まで一貫して続くパレスチナ人の民族浄化は、「漸進的ジェノサイド」とよばれます。
講師は、イスラエル・パレスチナ問題は、歴史的文脈の中で捉えないと本質はわからないと強調されました。――この問題は、決してユダヤ教とイスラム教、ユダヤ人とアラブ人の対立ではない。イスラエルを「ユダヤ人国家」と言ってはいけない。なぜなら、ユダヤ人の中にはユダヤ教徒でない人、シオニストでない人がたくさんいるから。この問題は、ヨーロッパキリスト教社会の中に根っ子があり、第1次世界大戦後のヨーロッパの植民地主義的世界分割が中東にいくつもの国を生み出した結果である、と。
一方、マスメディアなどが「イスラム原理主義組織」「テロリスト」などと形容するハマースについても、講師は正しい理解を持つことを主張されました。――イスラエルによるパレスチナ人の土地の占領が先にあり、それに対して国際法で認められた抵抗権の行使としての武装抵抗を行っているのがハマースである。ハマースのすべてを認めるわけではないが、国際法が認めるものか、禁ずるものかを見分ける必要がある。例えば、今回のエジプトによる停戦提案に対して、ハマースは、「イスラエルが自分たちの要求(封鎖の解除)を呑むなら、10年間停戦する」という対案を出していた、と。
他方、イスラエルの異常さ、不法さについて講師は次のような事実を指摘されました。
イスラエル国内では、「アラブ人を殺せ!」(イスラエル国民の20%がアラブ人)、「左翼を殺せ!」(イスラエル国民の5%が左翼)ということが声高に叫ばれ、イスラエルの与党も野党も、ガザに対するジェノサイドを公然と唱え、パレスチナ人に対するレイシズム、ヘイト扇動が行われ、反対の声を公然とあげることができないという状況がある。
また、歴史的にみて、ヨーロッパにおけるユダヤ人差別が問題であるのに、1947年の国連総会では、ユダヤ人を自国から追い出したいキリスト教徒が主なアメリカ、ソ連、フランス、ブラジルなどが賛成し、パレスチナの56.5%の土地をユダヤ国家、43.5%の土地をアラブ国家とし、エルサレムを国際管理とするというパレスチナ分割決議が可決されました。しかし、イスラエルは国連分割案の1.5倍の面積を占領した。

続いて、講師は、イスラエルによるガザの封鎖について、これは「殺戮なきジェノサイド」あるいは「生きながらの死」であると、ズバリその本質を指摘されました。
世界人権宣言(1948年)は、第13条2項で、「すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。」と謳っています。しかし、ガザの住人にはそのような自由はありません。子供たちは、封鎖されているガザしか知りません。ライフラインはイスラエルが完全支配し、飢え死にしない程度に生かさせておくという政策がとられています。これは、「緩慢な死刑」「狡猾なジェノサイド」です。封鎖解除なき停戦を受け入れろというのは、「生きながら死ね」というのに等しいことです。
この問題について講師はこう強調されました。――《ガザ》は意図的かつ政治的につくり出されたものであり、《ガザ》を「人道問題」に還元してはならない。《ガザ》とは、あくまでも「人権問題」であり、「政治的問題」である、と。

そして最後に、日本の私たちがなすべきこととして、次のように訴えられました。
― 現実を変えること(Make Difference)。
― トランスナショナルな草の根の市民の力で「不処罰」の「伝統」に終止符を打つこと。
― イスラエルに対するBDS=ボイコット(Boycott)、投資引き上げ(De-investment)、制裁(Sanction)を実施すること。
― 集団的自衛権、武器輸出の解除、沖縄米軍基地に反対すること。
― 自分たちの代表としてこれらの問題を解決する政府をつくっていくこと。

 イスラエル・パレスチナ問題についての深く広い知識と現地からの豊富な情報に基づく講師のお話のすべてを紹介することはできませんが、私なりに消化できた範囲でその要点をお伝えします。間違いがあれば、それは報告者の責任です。

なお、この問題についてさらに詳しくお知りになりたい方々のために、講師が紹介された本(新書版)と日本語情報サイトは以下のとおりです。

 ・ヤコヴ・M・ラブキン著、菅野賢治訳『イスラエルとは何か』(平凡社新書、2012年)
 ・パレスチナ情報センター http://palestine-heiwa.org/
 ・パレスチナの平和を考える会 http://palestine-forum.org/
 ・ストップ・ソーダストリーム・キャンペーン http://d.hatena.ne.jp/stop-sodastream/

(報告者:岩本速雄)

# by naraala | 2014-09-18 23:15 | 講演会

岡 真理さん講演会のお知らせ

"繰り返されるジェノサイド 封鎖・占領・植民地主義"
~完全封鎖下のガザを訪ねて~

京都大学教授 岡真理さん講演会
9月6日(土)

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パレスティナの勉強会です

パレスティナ難民500万人のうち180万人が暮らすガザ地区、ここはイスラエルによって隔離壁が建設され、外部との接触は極めてこんなになっているという。ジャーナリストもガザ地区には入れないため、ニュースは一方的にイスラエル側から世界に発信され、パレスティナの実態はほとんど報道されない。そんな中、この3月に岡さんご自身が、ガザ地区を訪問、精力的に取材をされ、写真も資料も整理されています。
お話は、イスラエル建国の歴史からパレスティナを襲った民族的悲劇を分かりやすく、あっという間の2時間。
京都大学の教授という肩書きにビビッてしましそうだけど、語り口は、お茶目な面も見えて魅力的。
そして9月6日(土)に奈良へも来ていただけるようのお願いしましたところ、やさしい笑顔でご承諾くださいました。
皆様どうぞお楽しみに  


2014年9月6日(土)
午後2時~4時30分
  奈良県文化会館第一会議室
      (近鉄奈良駅より徒歩5分)
  資料代 500円(会員無料)


# by naraala | 2014-07-03 09:42 | 最新のお知らせ

ナラーラ第12回総会開く

ナラーラ第12回総会開く

第一部の高林敏之さんの講演には33人が参加

第二部の総会では、報告と提案を満場一致で採択

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 ナラーラ(奈良県アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会)の第12回定期総会が、3月22日(土)午後2時から、奈良市内で開かれました。
 宮城恭子理事長が開会あいさつ。「2002年の「会」の発足にあたって、『10年続けたら文化になるよ』といわれたが、あっという間に12年がたってしまった。安心して暮らせる、豊かな世界の実現を目ざして、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの諸国民との連帯をいっそう強める活動をナラーラとして進めていきたい。最初に、高林敏之さんの奈良での講演は三度目となることを紹介、いま日本とアフリカの関係はどうなっているのかについての講演を聞いて、確信をもって、活動にとりくめるようにしたい」とあいさつしました。

 また、宮城理事長は、高林さんが「アフリカや中東、そのなかでも『アフリカの角』といわれる地域が、集団的自衛権の行使や武器輸出の対象となる危険性が大きい」と述べ、「その地域の市民、住民にとっての平和、民主主義に軍事関与がやくだつものか? むしろ日本を『紛争』と『抑圧』の加担者にする安倍首相の「積極平和主義」にもとづく軍事関与を許さぬたたかいを、日本国民自身が日本国内で強めていくことこそが、求められている真の『国際貢献』」と言われたことに感銘し、「世界の宝といえる非戦、非武装をうたった『日本国憲法九条』を、力をつくして守り抜き、安倍政権の『解釈改憲』など絶対に許さないたたかいをナラーラとしても進めて行こう」と、その決意を語られました。

 高林さんの講演の後、ナラーラ第12回総会がひらかれ、活動報告と活動方針、会計報告と監査報告などが提案され、満場一致で採択されました。また、規約の一部改正と新役員についても、提案通り可決されました。

 

高林敏之さんが
「アフリカと日本──軍事優先の関係か、平和・民主の関係か」と題して講演

 

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 高林敏之さん(日本AALA連帯委員会常任理事・早稲田大学非常勤講師・西サハラ問題研究室主宰)が、「アフリカと日本──軍事優先の関係か、平和・民主の関係か」と題して1時間40分にわたって講演されました。

 高林さんは、安倍晋三内閣は、「集団的自衛権の行使」に向けた策動や、「武器の全面禁輸方針を定めた」「武器輸出三原則」の緩和など、安全保障戦略の見直し策動を強め、自衛隊が海外で戦闘に参加することを可能にしようとしていることを指摘しました。「集団的自衛権」というと、日本の周辺における尖閣諸島や「竹島」問題などで中国や韓国と軍事的に対峙する場合の行使、あるいは対「北朝鮮」という観点で考えられがちだが、東アジアでこうした軍事行動を日本が起こすことは、アメリカの世界戦略からして米国が到底容認するものではないことを明らかにし、現実化する可能性はほとんどないことを指摘しました。

 むしろ、アフリカや中東、そのなかでも「アフリカの角」といわれる地域が、集団的自衛権の行使や武器輸出の対象となる危険性が大きいことを、ジブチに設けた日本の自衛隊基地の存在などを例に、具体的に解明されました。

 以下、高林さんの講演の要旨を紹介します。

 

1、安倍晋三内閣による安全保障戦略の見直しの策動

 

TICAD Vの特徴

 2013年6月1日から3日まで横浜で、第5回アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development 略称TICAD V))が開かれた。 

 1993年以降、日本政府が主導し、国連,国連開発計画(UNDP),アフリカ連合委員会(AUC)及び世界銀行と共同で5年ごとに開催してきたが、これまで4回のTICADと違う大きな変化が、TICAD Vには見られる。具体的には5年ごとの会議のたびに外務省パンフレットを発行しているが、過去4回のパンフレットと違って、TICAD V のパンフレットにはNGOのことは出てこないし、JICAについても少しの記述しかない。AU(アフリカ連合)に関する解説ページも消えている。それと比べて「平和と安定のために」ということで、日本の自衛隊のことが大きく取り上げられている。日本の貢献の写真のほとんどが自衛隊で占められている。自衛隊の活動の強調と、安全保障・対テロ分野での支援強化の方向性が色濃くあらわれているのが特徴と言える。

 これは、安倍内閣の安保体制見直しの策動の反映と言える。第二次安倍政権のもとで開かれたTICAD Vの「横浜行動計画2013─2017」に盛り込まれているのは「PKO訓練センターへの支援等を通じた人材育成」、2012年以来のマリ紛争や2013年1月のアルジェリア人質事件を念頭に置いた「サヘル地域への安定化支援」、「テロ及び国境を超えた問題対策に資する北アフリカ・サヘル地域の能力向上支援」、さらに「海賊対策」を念頭に置いた「ソマリア沖の海上安全保障支援」などが含まれており、アフリカの主体性を否定し安全保障を重視する方針の反映と言える。
 

海洋安全保障の強調

 2013年12月17日に閣議決定された「国家安全保障戦略」は、その課題のひとつに「シーレーンにおけるさまざまな脅威に対して、海賊対処等の必要な措置をとり、海上交通の安全を確保するとともに、海洋安全保障協力を推進する」を挙げ、「海洋安全保障に係る二国間・多国間の共同訓練等の協力の機会の増加と質の向上」をはかるとしている。その際、重要となるのは、あとで詳しく述べるが、ジブチの自衛隊基地である。このシーレーン防衛は、ペルシャ湾からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海を経て我が国にいたる資源・エネルギーの多くを中東地域からの海上輸送に依存している我が国にとって重要であることから、シーレーン沿岸国等の海上保安能力の向上を日本として支援し、戦略的利害を共有するパートナーとの協力関係を強化していくことを強調している。

 

「地理的制限なき集団的自衛権行使」に向けた策動

 2013年2月、首相の決裁で設置された首相の私的諮問機関である安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)のメンバーは、集団的自衛権の行使容認に積極的な人ばかりで、極端な偏向ぶりが際立っている。安保法制懇の北岡伸一座長代理(国際大学学長)が提起する集団的自衛権の行使条件(ロイター、2014221日報道)は、(1)日本と密接な関係にある国が不当な攻撃を受けた場合、(2)放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合、(3)攻撃を受けた国から明示的に要請があった場合など、海外での行使を可能にする内容である。例えば自衛隊の基地を設置するほど「密接な関係にある」ジブチが攻撃を受ければ、「放置すると日本のシーレーン安全保障に大きな影響が及ぶ」ので、ジブチの明示的な要請があれば「集団的自衛権」を行使できることになる。実際に北岡氏は、「集団的自衛権を行使する自衛隊の活動範囲について、地理的な限定を設けることは不適切」(2013年11月5日NHK報道)と述べている。これは、安倍首相、外務省の考えを受けた発言であり、「地理的制限」を取っ払うというのが、その本音だろう。

 (編集注:自民党の石破幹事長も、「自衛隊が地球の裏側まで行くこともありうる」と最近発言した。)

 

「武器輸出三原則」改悪の動き

 政府は武器輸出三原則を見直そうとしている。武器輸出のルールを、これまでの「原則禁止」から、一定の要件を満たせば可能とするものだ。

 新たな原則案によると、「(1)国際的な平和や安全の維持を妨げることが明らかな場合は輸出しない、(2)輸出を認める場合を限定し、厳格審査する、(3)目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る」(「東京新聞」2014年2月25日)とされているが、(1)の規定はきわめて主観的な基準である。その修正案として「国際紛争の当事国への輸出禁止」を盛り込むとされたが、「国際紛争の当事国」は「武力攻撃が発生し、国際の平和や安全を維持、回復するため、国連安全保障理事会が取っている措置の対象国」と狭く定義されたため、制裁などの措置を受けていなければ侵略国(キプロス北部を占領するトルコ、西サハラを占領するモロッコなど)でも紛争当事国でも武器輸出が可能になる。実際、イスラエルへの武器や関連技術の輸出は可能となるとの政府見解が出された(東京新聞314日:共同)。

また武器輸出の審査基準は「平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合」「わが国の安全保障に資する場合」などとされている。この場合、例えば国連安保理で決議された「海賊対処」行動の拠点であり、「シーレーン安全保障に資する」ジブチへの武器供与が可能になる。

 こういう安倍政権の一連の動きを見ていると、アフリカや中東、なかでも「アフリカの角」と呼ばれる地域が、集団的自衛権行使や、武器輸出の対象となる危険性が大きいことが言える。

 

2、アフリカへの自衛隊派遣の事例

 

旧来型PKOによるもの

 自衛隊が派遣されている旧来型(中小国主導で創設され、停戦監視や選挙監視など非実力行使型)のPKO(平和維持活動)には次のようなものがある。「国連モザンビーク活動」(ONUMOZ)─1993年5月~1995年1月、国連スーダン派遣団(UNMIS)─2008年10月~2011年9月、国連南スーダン派遣団(UNMISS)─2011年11月~。

 これらの事例を見ると、非実戦型のものばかりで、必ずしも自衛隊でなくとも、警察官や文民要員を派遣しても良いものである。もちろん武器の使用など必要ないものである。しかも、日本のPKO協力法に定められた参加原則を満たしている場合でも、国連西サハラ住民投票派遣団(MINURSO)には自衛隊を派遣していない。そこには占領国モロッコとの友好政策が根底にあり、西サハラ問題を黙殺する姿勢が表れている。

 

PKO外での自衛隊の派遣

 村山連立内閣のもとでの「ルワンダ難民救援」─1994年9月~12月にも自衛隊は派遣された。これは親仏独裁政権の政府軍・民兵たち、すなわちルワンダ大虐殺の実行者たちが、フランス軍を中心とした多国籍軍の保護のもとに、これも親仏独裁政権の支配下にあったザイール(現コンゴ民主共和国)東部の難民キャンプに逃れているのを「警護」する役割を担うことになった。これはフランスと対立する新政権(ルワンダ愛国戦線)の不安定化の要因となり、1997年のルワンダ軍などによるザイール侵攻、さらには現在のコンゴ民主共和国東部紛争を誘発することになった。

 あとは、2009年3月からのソマリア沖「海賊対処」行動で、海上警備行動だった。日本で「海賊対処法」ができてからは同法による派遣となっているが、2011年6月に自衛隊のジブチ基地が開設されている。初の自衛隊の海外基地である。

 このように自衛隊の派遣にしてもきわめて恣意的な政治的判断によるものである。

 

3、ジブチの自衛隊基地の問題──植民地主義的な「地位協定」とジブチの事情

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「地位協定」の内容

 200943日に、日本政府はジブチ政府との間に外相間の「交換公文」として地位協定を締結し、これが自衛隊基地にも適用されている。正式な「条約」「協定」ではなく、行政取極めとして行うことで国会での審議を回避したのである。

この「交換公文」の内容を見ると、「日米地位協定」による在日米軍の特権を上回る特権が日本に与えられている。その内容は次の通り。

 第4条各号─ジブチに駐留する自衛隊、海上保安庁および現地連絡事務所の要員・財産・資産はあらゆる形式の訴訟手続きから免除され、捜索・徴発・差し押さえ・強制執行を免除される。

 第8条─「日本国の権限のある当局は、ジブチ共和国の領域内において、ジブチ共和国の権限のある当局と協力して、日本国の法令によって与えられたすべての刑事裁判権および懲戒上の権限をすべての要員について行使する権利を有する。」

 この内容は、自衛官、海上保安官らの日本人要員が任務中・任務外を問わず、事件をおこした場合の刑事裁判権を、全面的に日本側に委ねる規定である。

 この地位協定について、参議院での海賊対処法の審議のさい、参考人として出席した森本敏(当時、拓殖大学教授、のち野田内閣で防衛大臣)氏は「これは今後の日本の自衛隊の海外における活動の非常に良い例といいますか、になりつつあるんだなということを強く感じるわけであります。特に、この交換公文の中で、すべての刑事裁判権を日本側にゆだねているという、大変日本に有利な地位協定の内容になっていることに私は一種の感慨を覚えるものです。」「それは、在日米軍基地において、つまり在日米軍が日本で享受できる特権よりもはるかに日本にとって有利な協定になっているのではないかと。そして、そのことは今後日本が海外に駐留するときに、この協定をモデルにして各国と協定が結ぶことができるというのであれば、非常に良い地位協定の基礎ができたのではないかという趣旨を申し上げた次第でございます。」と意見を述べている。

 日米地位協定の不平等に苦しむ日本が、さらに不平等な「協定」をアフリカの一つの国に押し付ける──それは、幕末に欧米列強との間に締結させられた不平等条約に類するものを、明治維新後に朝鮮に押し付けた行為の再現といわなければならない。

 しかも「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」は、いわゆる「海賊」を日本の法により拘束し、最高刑は死刑という処罰ができる法律で、ソマリアに限定されない恒久法である。この法律は、ソマリアの無政府状態に便乗して有害廃棄物の投棄や水産資源の乱獲を繰り返す外国船舶によってその生活が脅かされ、自警を始めた人たちを「海賊」と決めつけ、その「海賊行為」に追い込まれたソマリアの人たちの苦境を利用して、世界的な治安出動と現地人処罰が可能とされた法律である。

 そのような、地理的制限なき治安出動の基地がジブチの自衛隊の基地なのだ。

 

ジブチの事情

 スエズ運河の南、紅海からアデン湾に出るところにジブチはある。狭小な砂漠気候の国で昼間は50度に昇る暑さである。塩湖で採れる塩と皮革以外に生産物を持たず、食糧のほとんどを外国からの輸入に頼っている。ジブチ港の港湾サービス、および同港とエチオピアを結ぶ鉄道利用収入、フランス軍基地関係の収入に全面的に依存している「基地・港湾」国家であるため、インド洋・アデン湾での「海賊」行為の激化による貿易ルートの混乱は死活問題であり、自国の基地を利用して「海賊」対処活動に携わる諸外国に対する立場はきわめて弱い。

 スエズをエジプトとの協定でイギリスが抑えたので、フランスは南の戦略的要衝の地であるジブチを抑え、人口の6割を占めるソマリ人(その大半がイッサ氏族)による大ソマリ主義(植民地分割に際し4つの列強により分断されたソマリ民族の統一をめざす思想・運動)拒否の姿勢を取り、意図的にアファル人(人口の35%)優遇策を取った。1967年には地名から「ソマリ」の名を削るため、「フランス領ソマリ海岸」から「フランス領アファル・イッサ」に改名した。ジブチはフランスが作りだした人工国家である。
 1977年の独立以後は、ソマリ人イッサ支族出身の親仏政治家ハサン・グーレド・アプティドーン大統領が22年間独裁体制を敷いたのち、1999年に甥のイスマイール・オマール・ゲレー大統領が継いでいる。「進歩人民連合(RPP)」による事実上の一党独裁体制が敷かれている。この独裁体制のもとで、国民無視の日本との地位協定が結ばれている。アファル民族は冷遇され、1990年代前半にはアファル人の武装勢力「統一民主回復戦線(FRUD)」による武力紛争が誘発されている。

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                   ソマリア氏族の分布状況と現在の国境


 ソマリア情勢に大きく影響されるジブチ政府は、ソマリア和平プロセスにおいて主導的役割を果たしてきたが、情勢が好転しない中でアフリカ連合ソマリア派遣団に参加し、イスラーム聖戦主義武装勢力と交戦するようになる。また隣国エリトリアとの間では、国境紛争も起こしている。

 このジブチが、エリトリア軍、ソマリアのイスラーム聖戦主義武装勢力のアッシャバーブ、あるいは「海賊」などから攻撃を受けた場合、ジブチに自衛隊基地を有する日本がジブチ政府の「要請」によって、「集団的自衛権」を行使して、ジブチ軍とともに戦闘に加わったり、ジブチ軍に武器を供与することは、安倍政権がすすめる解釈改憲や武器輸出三原則の改定などによって、論理的に可能になる。 

 日本がジブチの世襲独裁体制と結託して、海外での安全保障活動をすすめるということになれば、1990年代以降のアフリカの政治的自由を求める民主化と2011年以来の「アラブの春」と言われた「北アフリカ革命」に抗し、ジブチの民主化そのものも妨げることに加担することになる。

 

4、第二次安倍内閣の中東・アフリカ外交──軍事優先、平和と民主主義の軽視


 
第二次安倍内閣は、対米関係や対東アジア外交の行き詰まりと対照的に、中東・アフリカへの精力的な外交が目立つ。

 安倍首相の外遊は、中東・アフリカに集中しているが、これには日本の防衛関連の企業が同行している。日本共産党の井上哲士参議院議員が国会質問で使ったパネルを援用させてもらうと、次の通り一目瞭然である。

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 重点対象にしているのは「湾岸協力会議(GCC)」諸国、トルコ、西アフリカ諸国、それに「アフリカの角」といわれる地域の諸国である。

 GCC(Gulf Cooperation Council諸国は、米軍の駐屯を受け入れている。カタールには米中央軍司令部、バーレーン王国には米第5艦隊司令部が置かれる専制君主制諸国である。加盟しているのはアラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国で、安倍首相はそのすべての国を訪問し、外交・防衛当局間の安全保障対話の新設に合意している。「民主主義」をまったく度外視した「軍事優先」の外交である。GCC諸国との軍事協力は、この地域における民主化運動に敵対し、かつイランを著しく刺激しかねないものである。

 安倍首相は就任以来、トルコと3度も相互訪問し、首脳会談をやっている。そこで話し合われたのは、戦車エンジン技術移転、通信衛星の輸出などの軍事関連協力をすすめることであり、原発の輸出にも合意した。トルコはキプロス北部を40年も実質軍事占領し続けている「紛争当事国」だが安保理の制裁対象ではない。そこにも武器を輸出しようとしている。

 アフリカで最初の訪問国はジブチで、「アフリカの角」地帯では、エチオピアも訪問している。エチオピアにはアフリカ連合(AU)の本部があるが、エチオピアはソマリアにも兵員を派遣している。一方ソマリア大統領が訪日した際には、「日本は、国際社会と協力しつつ、治安対策や海賊対策で貢献していく」と約束したりしている。AUとの連携を強める中で、反面ジブチと国境紛争を抱えるエリトリアやソマリアのアッシャバーブと対立する立場を明確にしているのが特徴である。

 西アフリカでは、民主化が進展する一方、コートジボワールやマリの紛争のようなPKO事案が相次いでいる。安倍首相のコートジボワール訪問時に、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)諸国との首脳会議をひらき、地域安全保障の分野で積極的な役割を果たす同組織との関係強化をはかった。

 こうした一連の訪問と共同声明等によって、安倍首相は自らの主張する「積極的平和主義」なるものを具体化する「戦略的」外交をすでに行っていると言える。それは「コートジボワールとの共同声明」「モザンビークとの共同声明」「エチオピアとの共同声明」「AU本部での政策スピーチ」等に示されている。

 冷戦時代のアフリカ外交の反省が全くなく、「民主主義」や「平和」を軽んじ、「独裁」や「権威主義」との価値観を共有する様相そのものである。


 

5、まとめ


 「海賊対処法」制定と、ジブチの自衛隊基地の設置により、日本は海外のどこでも不平等協定を締結して基地を設置し、「警察行動」を展開することが可能になっている。「集団的自衛権」容認の解釈改憲と、武器輸出三原則の改定で、日本が最初に戦争に参加するのは、まさにアフリカになる可能性が高いといわなければならない。

 地域の実情を踏まえず、「民主主義」と「平和」をないがしろにしたいわゆる「積極的平和主義」は、日本を紛争と抑圧の加担者にするものである。


# by naraala | 2014-04-23 17:54 | 総会